不毛地帯
[第19話]
巨額な投資をして石油開発に臨んだものの、4本の井戸を掘っても石油は出ず、社長・大門(原田芳雄)から「最後の一本」と念を押されて許可が下りた5本目も、現地から「ガス暴噴を起こした」と連絡が入る。それ以降、現地と連絡が取れなくなり、兵頭(竹野内豊)と壹岐(唐沢寿明)は焦りの色をみせた。03/11放送
「ガス暴噴」の知らせから2日後、事態は収束し、石油開発が再開される。
そんなある日の夜、東京商事・鮫島(遠藤憲一)が壹岐のもとを訪ねてきた。鮫島は、大門が綿花相場で相当な損失を出していることに触れ、近畿商事のメインバンク・第三銀行の頭取が心配していることを告げた。
翌日、出社した壹岐はさっそく綿花部長の伊原(上杉祥三)に事実確認を行い、責任を取るよう迫った。大門にはすぐに綿花相場から手を引くように進言し、聞き入れられない場合は、役員会議での決議も止むを得ないと話した。
危機感を覚えた大門は、関連会社に出向させた里井(岸部一徳)を呼び戻すことを考える。里井は「壹岐を近畿商事から出すのなら戻る」と言い、大門はそれを約束した。
先日、米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社との提携がご破算となった千代田自動車は、アメリカ近畿商事の海部要(梶原善)、八束功(山崎樹範)の努力で、ユナイテッドモーターズの提携が前向き方向で進んでいた。
石油開発では5本目の井戸の“水圧破砕”を決断する。“水圧破砕”は威力はあるがリスクも伴う。壹岐は苦慮したうえ、“水圧破砕”に全てを賭けることを決めた。
近畿商事の役員会議では、綿花相場での巨額損失が話題となったが、大門は綿花相場の件より60億円を無駄にした石油開発の方が問題だと言い、里井を副社長として呼び戻すことを宣言する。
そのときだ。5号井戸から石油が噴出したという知らせが入った。壹岐の目には涙が…。そして、これまで苦労を共にした役員たちを労った。
近畿商事では記者会見が行われ、その席で壹岐は油田発掘を報告した。記者会見で、壹岐は「今回の成功はリスクを恐れなかった大門の勇気が一番の要因」と大門を賞賛する。その様子を見ていた里井は会見場を後にした…。
会見を終えた後、社長室に戻ると、壹岐は大門に「勇退してください」と迫った。壹岐の言葉に大門は激怒するが、壹岐の表情は変わらなかった。
翌日、「近畿商事社長が綿花相場で巨額の損失を出した」という記事が毎朝新聞の一面を飾る。壹岐が毎朝新聞の田原秀雄(阿部サダヲ)にリークしたのだ。
怒った大門は里井を呼びつけ、大株主や主力銀行の支持を取り付けるよう命じる。しかし里井はそれを拒否。さらに「近畿商事復帰の話を白紙に戻してほしい」と言うのだった。株主や銀行だけでなく、社員までもが壹岐を支持するなか、社長・大門であっても「壹岐を切ることはできない」と判断したのだった。
一方、琵琶湖に千里(小雪)を呼び出した紅子(天海祐希)は「壹岐と結婚しないのか」尋ねた。すると千里は、壹岐の亡き妻・佳子のように壹岐を支えることができないと答える。それを聞いた紅子は「あなたと亡くなった奥様は違うのよ」と助言する…。
それからしばらくしたある日。大門は別の日、壹岐は近畿商事の社長を退いて、会長に就任することを壹岐に告げた。すると壹岐は自らも退くことを大門に告げ、ともに相談役になることを進言する。「世代交代を組織で戦うべき」と訴える壹岐の心意気に大門は心打たれた。
役員会の席で、大門と壹岐がともに退任し、相談役になることを知った他の役員たちは驚いた。
数日後、壹岐はシベリアに向かうために羽田空港へ。「まだ勝負はついてない!壹岐を倒せるのはこの鮫島だけだ! 辞めるな!」と叫んだ。
極寒の地・シベリアで、壹岐は日本人墓地を訪れた。静かに手を合わせる壹岐。その頬には涙が流れていた…。
《完》
03/11
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第1話
キャスト
壹岐正 / 唐沢寿明(からさわとしあき)1912年生まれ。陸軍大学校を首席で卒業したエリート軍人である。
第二次大戦中は、軍の最高統帥機関だった大本営の参謀として作戦立案をしていた。
終戦を受け入れない関東軍を説得するため、停戦命令書を携えて満州に向かう先でソ連軍に拘束された。
その後軍事裁判で強制労働25年の刑を宣告、シベリア極北の流刑地ラゾに送られた。
11年間に及ぶ強制労働に耐え昭和31年に帰国。
帰国後近畿商事に入社。
兵頭信一良 / 竹野内豊(たけのうちゆたか)
近畿商事東京支社鉄鋼部勤務。
陸軍士官学校の壹岐の後輩にあたる。
近畿商事の将来を世界的な視点でとらえている。
商社の世界に戸惑う壹岐の、良き理解者となる。
壹岐佳子 / 和久井映見(わくいえみ)
壹岐正の妻。
壹岐の陸軍大学校時代の担当教官であった坂野の娘である。
壹岐のシベリア抑留中は女手ひとつで二人の子供を育てた。
大阪府庁で働いている。
壹岐直子 / 多部未華子(たべみかこ)
壹岐の娘。
佳子の苦労を目の当たりにしてきたため、壹岐に二度と戦争には関わらないでほしい、と懇願した。
父の商社就職を心から喜んでいる。
川又伊佐雄 / 柳葉敏郎(やなぎばとしろう)
防衛庁の空将補で、噂によると次期空幕長らしい。
自衛隊のあり方に疑問を抱いているので、自分が空幕長になって、自衛隊を国民に認められるものに変えたいと考えている。
壹岐とは陸軍士官学校時代からの同期で、親友。壹岐がシベリアに抑留されている間は佳子に仕事を紹介するなど、壹岐家を支えた。
貝塚道生 / 段田安則(だんたやすのり)
防衛庁官房長。
警察出身の元内務省役員。鮫島と手を結び、防衛庁の次期主力戦闘機にグラント社のスーパードラゴンを採用するよう総理派に働きかけている。
芦田国雄 / 古田新太(ふるたあらた)
川又の部下。防衛部の防衛課計画班長。
小出とは防衛庁空幕時代の同僚である。
金と女に目がないが、気の弱い臆病な男。
谷川正治 / 橋爪功(はしづめいさお)
満州関東軍の幕僚。
壹岐ともどもシベリアに送還。
帰国後は、シベリア帰還者と遺族のための組織「朔風会」運営。
竹村勝 / 中丸新将(なかまるしんしょう)
秋津紀武 / 中村敦夫(なかむらあつお)
大陸鉄道司令官、中将。
壹岐とはシベリア抑留中にハバロフスクで再会した。
極東軍事裁判に、ソ連側の証人として出廷することを強要され、一度はそれを受け入れた。
秋津精輝 / 佐々木蔵之介(ささきくらのすけ)
秋津中将の息子で、千里の兄。
フィリピンで終戦を迎えた。多くの部下を死なせてしまったことに大きな責任を感じ、仏門に入って厳しい修業をしている。
秋津千里 / 小雪(こゆき)
大陸鉄道司令官・秋津中将の娘。
京都に住んでいる。夢は陶芸家である。
壹岐に「父の最期について話を聞かせてほしい」と手紙を送る。
亡き父の面影を感じさせる壹岐に心を惹かれる。
久松清蔵 / 伊東四朗(いとうしろう)
経済企画庁長官。
国防会議のメンバー。国防会議では防衛庁の次期主力戦闘機を決定する。
壹岐とは、戦時中に早期和平工作について議論しあった仲で、旧知の間柄である。
政界や官僚とのつながりがとても広い。
田原秀雄 / 阿部サダヲ(あべさだを)
毎朝新聞政治部記者。
現在は防衛庁の、次期主力戦闘機の機種決定に関連する問題を取材中。
ジャーナリスト魂にあふれる人間。
新聞記者ならではの情報で、鋭い視点で壹岐らに迫る。
浜中紅子 / 天海祐希(あまみゆうき)
クラブ「ル・ボア」経営者の娘。
店でピアノの弾き語りをしている。
情報通で、商社の人間とも交流が深い。
兵頭とは以前からの顔なじみ。
鮫島辰三 / 遠藤憲一(えんどうけんいち)
東京商事航空機部長。
「航空機の東京商事」という実績を築いた人物である。
防衛庁の次期主力戦闘機には、グラント社のスーパードラゴンを推している。
目的のためには手段を選ばない男で、別名「空のギャング」。
大門一三 / 原田芳雄(はらだよしお)
近畿商事代表取締役社長。
開拓精神旺盛で、大局を見極め大胆な施策を打ち出すトップらしさ溢れる人物。
近畿商事の国際化にあたって、壹岐の情報収集力や状況分析力に目をつけ、近畿商事で働かないかと誘う。
里井達也 / 岸部一徳(きしべいっとく)
近畿商事東京支社長。
鉄鋼や航空機を扱う東京支社のトップ。防衛庁の次期主力戦闘機受注を獲得するために、防衛庁の中枢と太いパイプを持つ壹岐を航空機部に異動させればよいと提案する。防衛庁の次期主力戦闘機にラッキード社のF104を推している。
松本晴彦 / 斉木しげる(さいきしげる)
小出宏 / 松重豊(まつしげゆたか)
近畿商事東京支社航空機部に勤務。
防衛庁の次期主力戦闘機受注のために、川又の部下である芦田に接触。
かつては防衛庁の防衛部調査課班長であったが、近畿商事に機密情報を漏らしたことが発覚しかけたのをきっかけに近畿商事に入社という過去を持つ。
自分を拾ってくれた近畿商事に恩義を感じて、実績を挙げようとしている。
海部要 / 梶原善(かじはらぜん)
塙四郎 / 袴田吉彦(はかまだよしひこ)
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